[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第16回 着陸帯   ~2007.9.18~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

着陸帯を見直そう

何度も言うようだが我が国で空港規模の膨大な平地を確保するのは至難の業である。土地の所有権制度も土地に対する私的所有意識からも、まともな発想でまともにまとまった土地を確保することは真実正気の沙汰ではない。小規模所有の土地の権利をまとまった広さの土地に改変することを地上げと呼ぶが、それを業とする職業を地上げ屋と呼んだ途端、なにか暴力沙汰や胡散臭さを感じさせるのもこの地上げの難しさから来る結果であろう。 地上げ業が、細分化され過ぎた土地の利用価値を高めるための大切な業であるにもかかわらずこのような偏見を持たれるようになったのは、いったい何時頃からだっただろうか。

第13回コラムでも書いたように空港の広がりと形状の骨格をつくるのは主として、滑走路とそれを囲む着陸帯の存在である。我が国の空港を我が国らしくコンパクトなものに工夫することは、飛行場の計画技術者の本来的至上命令の一つではないかと常々考えているが、このためにも着陸帯の意義を根本的に議論して見る必要があると信じている。

着陸帯って、いったい何?

今後、新規空港は考えられないと言うこの頃になって、着陸帯の基準を見直す必要がどこにあるのかと思われるかも知れないが、航空機の技術は今後も続くし、何よりも航空交通利用者のサービス向上に対する要望は際限の無いものと考えなくてはならない。現に、滑走路の数や延長ばかり話題になる羽田空港や成田空港でもエプロンの充足は新聞紙上にあまり書かれないが、計画技術上深刻な問題のひとつである。滑走路能力の増大は、そのまま関連施設の拡大につながるのである。 かくして、需要やサービスの変化に応じて、航空施設の改変は未来永劫存在することになる。話はややそれるが、空港施設の高質化が最近空港整備の柱として唱えられるのを良く聞くが、空港のように変化の早いところでは、質の高い施設とは、記念碑的にもなるほど耐久性がある施設を言うのではなく、要請の変化に応じ、いつ改造しても損と考える必要がないほどの柔軟性のある施設ではないかと考えている。

第13回のコラムで、空港を計画しようとするとき、ICAO, Annex 14の第3章滑走路等基本施設と第4章制限表面の確保は切り離して議論できないと述べたが、同時に扱わねばならないにはしても両者はもともと狙いは別のものである。ICAOでは制限表面を図示するとき、空港の全体像を表示する必要性から航空法で言う着陸帯(strip)を滑走路とともに描き、さらに,より図を簡便化しようとして、第3章のstripを第4章の空域制限の地表底部平面と共通のものとして表現したものと思われる。 現にFAAでもICAO自体でも第4章で扱う航空機の離発着に必要とされる空域の確保の導入部においては、第3章の地表面を走行する航空機の安全のために必要とする地表面の必要条件である平坦度とか航空機の重量に耐える地表面の強度等とかとは何ら直接的には共通性を有していないように思われる。例えで言えば、第3章のstripすなわち着陸帯は、滑走路やそれから脱輪した航空機の安全を確保するための道路で言う舗装面や路肩のようなハードのものであり、第4章の制限空域は、橋梁やトンネルの建築限界のように単に空間部分の確保を要求している。 もともと出自の異なるものを無理やり、表現上、 strip部分を共通の下部底面として立体表現しているが、本来同じ広がりの面として同一化する必要はなかったのではないか。あるとすれば、どちらから見ても共通の実体である滑走路そのものを基にすべきであったと思う。米国で使われている空港計画の教科書をみても、第3章のために確保すべき地表面と第4章のために確保すべき地表面部分の平面は別の定義を置いている。

結果はどう異なるか

そもそも航空法で着陸帯と言う訳語を第3章の地表面上の定義に使うのが間違いのもとであろう。ここでは素直に滑走路帯とすべきである。このために Annex 14ですら、滑走路から脱輪した航空機の安全のために要求される整地部分を本文に示す一方で、わざわざ補足部分を加えて、さらに望ましいとするならばとし、より広い範囲を要求している。 すなわち、全く飛行する意志の無い航空機の地上部走行の安全上確保すべき範囲はここまでとし、この範囲を超える平面部分は、まさに飛ぶ意志を明確に持つ航空機の安全のために確保すべき空間であって、この範囲の地表部分は、一定以上の突起物を排除しなければならないとしているのであって、ここでは、地面の強度などは何ら要求されていないと解釈すべきであろう。

我が国の空港にあっても、すでに供用されている空港のいわゆる着陸帯内の工事については、「制限区域内工事実施規定」で着陸帯内を二つに分けて、脱輪を考える地表面の強度を要求する滑走路側の部分と工事中はある程度でこぼこがあっても良いとする外側の部分とにわけて工事補修に対応することになっているが、 FAAやICAOの原点にまでさかのぼるならば、計画段階にまでこの考えを拡張徹底するべきであろう。 たとえば、海上空港の場合、現実に地表面を確保すべき滑走路周りの土地は第3章にしたがい、第4章のための空域の確保については水面であっても良いと言うようなものである。

とすれば、現在工事中の羽田空港のDランは埋立や桟橋の地表部分を計画よりも相当狭めても良いと言うことになる。直下型の地震を遠からず受けなければならないDランの埋立部分の頭部死荷重を縮減することが出来ればそれだけで島部分の地震強度は断然増大するはずである。契約済みの工事であり、全体の契約変更が出来なければ、一部は2期工事にまわすなどして、後年度対応にでもすれば、あの想像を絶する工期の厳しい難工事をわずかでも楽にすることが可能かもしれない。

もう一つ具体例として、羽田空港のBランにしても、かって障害物と考えられた整備地区が再整理されるならば、旧Bランの地に戻し、Aランの独立運用を可能とし、Aランの利用価値をあげることも可能となる。2500m延長の滑走路を持つ地方空港は概ね着陸帯が広いので今後種々の有効活用が可能となる。

ただし、前提として、転移表面等基準の見直しが必要であり、ICAO全体の思想に従って、すでに触れた我が国の贅沢すぎる各種基準の抜本的検討が行われることになろう。

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