[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第14回 関空の有利子負債   ~2007.8.20~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

関空の財務諸表

今回のコラムはひとつの思いつきではあるが、全く不可能であるとは思えない。空港整備法の改正が議論になっているとき、空港整備の本質に関わる問題であり、何らかの回答を得たいものである。

8月2日、待望の第2滑走路の運用が始まった。さすがのマスコミも第2滑走路の有用性をけなす記事は書かなかったようだ。ただ例によって、我が国に漸く現れた24時間空港を素直に祝うのではなく、「壮大なムダ遣い」にしないように頑張りなさいと言う忠告を忘れていないことがやはり気になる。 ところで、マスコミが自信をもって倒産もあり得るとする関空の「財務諸表」は本当に危険なものだろうか。そして1兆2千億円の有利子負債はそれほど危険な数字なのだろうか。つい最近のバブル経済の崩壊の際は、都市大手銀行の不良貸し出し問題が大きな話題となり、その解決に政府をあげて取り組まれ、またジェネコンについても有利子負債の削減と言った言葉を日々の新聞報道に見ない日は無いと思われるほどの記憶がある。確かに支払い利息が経営を圧迫する姿は、住宅ローンの支払いに追われる給与生活者の苦悩を髣髴とさせ、関空の経営状態を心配させるに十分な説得力があるように思われる。

前々回に触れたように運輸省による関空の事業予算の当初要求はいわゆる'上下分離'方式であった。当時、空港は全ての種別で空港の事業主体が自ら土地を所有するのは航空法の精神に沿って当然であり、かっての成田公団のように特殊法人の場合であっても、実質、国や自治体が空港の事業主体であるのと同じであった。株式会社が我が国の空港の事業主体になるのは関空が始めてであるが、株式会社であれ特殊法人であり、実態は公団と変ることはなく土地は自ら保有するのが前提である。あれこれと民間的色合いを要求されるようになったのはつい最近のことに過ぎない。

関空事業の当初予算が将来の経営破たんもあるべしとして、財務当局と交渉が進む中で、要求スキームの中でどうしても気になっていたのがこのことで、国からの借入金の返済が滞った場合の土地資産の扱いでもあった。当時の資料を見ると、約500ヘクタールの用地の造成工事費は約4500億円であり、土地は償却資産ではないので、全ての有利子資金の償還が完了した時点では、この会社の経営状況をどう評価すれば良いのか。大変な土地資産会社となってしまう。しかし、償還不能の場合はどうなるのか。 このような詮索はそれでなくとも予算獲得の難しい予算要求時にとても話題に出来ることではなく、とうに忘れてしまったが、今なら話題にできないことではないのではなかろうか。財務当局やマスコミが絶えず警告を発するほど関空会社は経営的に危険な状態にあるのか。個人的には、膨大な土地資産を有する関空会社がこの資産を活用しないのはもったいないように思う。ただ、この場合会社がどんなことがあっても忘れてならないのは、単年度黒字を維持し続けなければならないことだけではなかろうか。

有利子負債の償還は用地売却で解決

関空は、平成18年度の有価証券報告書によれば1兆2千億円もの有利子負債があるとされるが、営業収益は1,057億円あり、営業費用のほかに営業外費用として有利子負債の支払い利息が226億円あったと報告している。

この支払額の規模は有利子負債総額の1.9%に相当し、低金利時代の今日の個人資産の運用益からすれば、無視されるべき額ではない。関空の土地面積は、一期、二期合せて約1,055haあり、有利子負債額を総面積で割れば、平方m当たり11.4万円とほぼ用地造成費に近く、1兆2千億円全体を土地として小口証券化するのはオーダーとして無理がないのではないかと想像するのである。

関空会社は土地所有子会社をつくり、この子会社に土地を全て売却し、関空会社の利益の一部を賃借料として支払う工夫をし、子会社は土地を証券化して小口売却し、賃借料を利益として配当するようなイメージである。

土地評価の信頼度

マスコミは、未だに社説等で重々しく「壮大なムダ遣い」になる恐れを警告しているが関空を建設しなくとも済むような案があったならいざ知らず、ひとえに、 1兆2千億円と言う膨大な有利子負債を持っていることのみが気になるだけではなかろうか。もしこの負債を無くすことが出来ても同じことを言うだろうか。そして神戸空港の不要論までも主張するだろうか。筆者には財務当局の金貸しの論理が働いているように思う。もしそうであるならば、関空の土地を担保にするこの土地証券化が一般の理解が得られ買われるかどうかに尽きるように思う。 例え、関空がどうなろうとも、関空の土地本来の生産性は国債以上の利回りを生み出せると信頼されさえすれば良いのである。

関空の経営方針のあり方

滑走路2本の完全24時間空港化を達成した関空が今後平成18年度実績である支払い利息額226億円以上の賃借料を払っていくのは難しいと言うならばこの有利子負債解消計画は成立しない。客観的に見て、関空は多額の無利子負債もあるし、着陸料に頼りすぎる収入形態も徐々に解決しなければならないが、単年度黒字を実現し、累積赤字の解消さえ目処がつくならば、いわゆる'5・9・23'の'23'は意味が無いと言うのが筆者の主張である。 一般に経営に苦しんでいる企業が陥る資金繰り問題については、土地の他に膨大な償却資産を持つ身であることから、最近の公共事業に見られる安ければ良いというのではなく、きちっとLCCを考えた設備管理が出来るなら、空港設備は一般に高価格化の方向には無く、会社経営は現在が正念場のような気がする。土地所有にしても余裕ができれば土地証券を自らも取得すれば良い。いつまでも、「壮大な無駄遣い」というマスコミの決まり文句を何とか払拭したいものである。関西3空港問題の根源ですらある。

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