[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第13回 飛行場の成立   ~2007.8.1~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

平地と空と飛行機

我が国は、国際および国内において、民間航空交通を成立させるため、昭和27年基本法である航空法を公布するとともに、必要となる条件を整えることとし、空港を整備すると共に、国際にあっては競争力のあるエアラインを育成し、国内にあっては、自立できるエアラインの育成と、航空ネットワークづくりに取り組んだ。すなわち、航空交通の成立要件は、需要に耐える空港の存在とエアラインの存在、さらに国内にあっては航空ネットワークの形成である。これらの条件整備は今日の我が国の現状から見て期待通りの成果があがったと言えるだろうか。

まず空港整備については空港は、常にまとまった土地を確保しなければならない点で、つい先だっての土地バブルを生み出した戦後日本人のゆがんだ土地所有意識の影響をもろに受ける事業でもあり、首都圏の環状線道路整備と同様、金と時間ばかりかかる需要適応性の悪い公共事業の代表となっており今なお時代の変化についていけないことは明らかで、とても成功したとは言い難い。特に国際空港について見れば、成田空港に見られるようスタート時に国際的先見性を持たない有力者の反対にあい、さらには全共闘世代に悪用されるなど土地問題は未だ建設途上にある。今後とも日本人の土地所有権の考え方が変らないかぎり空港の土地問題は本質的に解決することはないだろう。

また競争力のあるエアラインの育成についても、順調であるとはとても言えない。我が国土はもともと巾の狭い細長い地形を有しており、離島対策を除けば幹線交通路としては鉄道に適した形状と言うべきであり、国内航空事業が鉄道事業とどこまで競争できるか疑問のあるところであろう。このため、国内ネットワークについても、わが国の経済構造が東京中心とする一極構造に進むにしたがい、羽田空港を唯一のハブ空港とするハブアンドスポークの形を採るのは必然であり、とても望ましいネットワークの姿とは言えない状態に向かいつつある。この結果、何かの原因でスポークが切れた地方空港はその段階で路線の存在しない空港になってしまう。

航空交通を再構築するためには、初心に戻り、必要な空港の選別と高質化、エアラインの育成と強化、そして望まれるネットワークとは何かからその再検討、再整備からやり直さなくてはならない。

ICAO Annex14

ここ数年前から空港の新設は終わったとして空港の高質化が唱えられるようになってきた。高質化と言う言葉自体抽象的であまり好きになれない。しかし空港を安全で利用し易いものにすることに否応はない。

航空法第一条は、我が国の航空の発展のための基本姿勢として、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続きに準拠することを決めている。そして、ICAO Annex14「Aerodromes」が空港の安全にかかる標準を明示している。すなわち空港の計画、整備、経営に関しては、このAnnex14が要求する内容全てに適応することが我が国の方針である。今日の空港計画担当者は、計画のたびにこのことを意識しているだろうか。相当重要な部分を曖昧にしているように思う。筆者は現役時代、実力不足からこのことに思いが至らず、過去からの出来合いのルールに従うのが常で、今でも反省しきりである。このため、 ICAOの原点に遡ればいくつもの点で現状より良い空港がしかも低コストで整備できたのではないかと考えている。

ICAO Annex14「 Aerodromes」の目次構成は10章からなり、大まかに言って、空港基本施設、空域制限、視覚援助施設、電力施設、消防等管理施設、メンテナンス等を規定しているが、飛行場の全体の形状を決めるのは、第3章の滑走路、誘導路等基本施設に関するものと第4章の制限表面の確保であり、この地表面部分とその上空の空域確保によって空港の外形が形成される。すなわち、空港計画において地表面のあり方と上空の空域は切っても切り離せない関係にあるのである。しかるに、近年公表された空港計画の中には、これらがばらばらに議論され、例えば海上だから外部から運航を妨げる障害物の進入はありえないと言うような一部省略形のものまであるが、これは本来の空港計画とは言えないのではないか。 もしそのようなケースが存在するなら、ICAOの規定との関係を明らかにし、その上で我が国の一般ルールとすべきである。一般に、ICAOのルールは多くの国を相手に基準化を図っていく必要があるため、極めて弾力的に制度化されていることを知らなくてはならない。

制限表面

上記Annex14 第4章「障害物の制限及び除去」の冒頭に注釈があり、「飛行場で予定される飛行機の運航が安全に行われ、飛行場周辺の障害物の増大によって飛行場が使用不能となる事を防止するために、飛行場周辺に障害物がない空域を定めること」とし、「これは物件が空域を突出してもよい限界を定める一連の障害物制限表面を設定することによって達成される。」とこの章の目的を示し、さらに進入表面等についての障害物査定の基準を別に紹介している。

我が国では、飛行場の制限表面は例えば進入表面について、空域上の保護は十分であり運航上の安全は完全に保護されているとされる「基礎ILS表面BIS (Basic ILS Surface)」のみを規定し、最終的に守るべき内側進入表面や内側転移表面あるいは着陸復航表面等周辺状況によってさらに工夫すべき領域については何ら触れていない。ICAOでは、このBIS表面に抵触する物件が存在することで直ちに計画を否定するのではなく、設定する飛行方式によって、「障害物評価表面OAS(Obstacle Assessment Surface)」と言う、より内側の保護空域の考え方を認めており、さらに衝突確率によって安全性をどこまで損なわずに運航可能かを計算する「CRM (Collision Risk Model)」なる航空機の運航実測データに基づく飛行経路確率を用いた保護空域の考え方までも提示している。

地形上、望ましい空港適地が殆ど存在しない我が国にとって、現在のBISに抵触する場合は全て認めないと言わず、様々智恵を出し合い、単なる工事段階でのコスト縮減のみに頼ることなく、効果のより大きい計画段階での空港整備費の軽減に努めるべきではなかろうか。今日の航空機の運航技術、運航支援技術は 2~30年前のそれとは大幅に進歩していることを考えるべきであろう。

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